報酬で釣って勉強させるのは本当に逆効果?

 子供を報酬で釣るのは良くない。

 それをやっても、報酬が出なくなれば勉強しなくなるし、報酬額もどんどん釣り上がっていく。

 勉強の必要性や面白さをしっかりと伝えないと、子供のやる気は育たない。

 いわゆる、“外発的動機付け”と“内発的動機付け”というやつです。

 損得勘定でする外発的動機付けはダメで、勉強の楽しさを伝える内発的動機付けが大切という考え。

 確かに長い目で見ればその通りなんですけど……。

 ちょっと、理想主義? 綺麗事? って思ってしまいます。

 そもそも、日本の学校教育自体がいい高校、いい大学、いい就職先に入るためという損得勘定の外発的動機付けで成り立っているわけですし……。

 勉強自体も学習内容の理解探究よりも、テストでの高得点を目的にしたものになっています。

 そこにお小遣い程度の金銭が追加されたって、今さら教育上問題があるとも思えません。

 要は使い方だと思うのですよ。

 で、こんな話を考えてみました。

目次

「物で釣ってもダメ」というご家庭の一幕

 いくら言ってもちっとも勉強しない息子に、お母さんは見かねてこんなことを言いました。

「今度のテストで80点以上取れたら、この前欲しがってたマンガを買ってあげる」

「マジで!?」

 今月のお小遣いを使い果たし途方に暮れていた息子は、目の色を変えて勉強し出しました。

 普段からこのくらいがんばってくれたら私も楽なのに……。

 そして、結果はまさかの80点!

「さぁ、早く早く! お金ちょうだい」

 勝ち誇ったようにマンガのお金を要求する息子に、ちょっとだけムッとします。

「まったくぅ、いつもこの調子でがんばってくれれば楽なんだけど……」

 そう言って約束していたマンガの代金を息子に渡しました。

 ともあれ、これで少しは勉強してくれるようになれば一安心です。

 しかし……。

 その期待を裏切るように、息子は次のテストでは今まで通りのひどい点数を取ってきたのです。

「なに、この点数は!? この前はあんなに良い点取ってきたでしょ!」

 そんな私の言葉もどこ吹く風で……。

「だって、今回はマンガかかってないし……」

「まったく、誰のための勉強だと思っているの!? あなたの将来のためなのよ!」

 誰のための勉強かと呆れ返るも、そういう事を言うならと新たな賭けを提案することにしました。

「じゃあ、次のテストで頑張ったら、またマンガ買ってあげるから」

「う〜ん、いま別に欲しいマンガとかないし……。

 だったら、ゲーム買ってよ、ゲーム!」

「ゲームって、マンガよりずっと高いでしょ?」

「……だめ?」

「もう! わかりました。その代わり、今度は90点以上だからね」

 こうして新たな賭けが始まったわけですが……。

 今回の結果は85点。

 目標の90点にはわずかに届きませんでした。

「90点には届かなかったけど、やればちゃんと点数取れるんだから、もっと頑張りなさい」

「えっ? じゃあ、ゲーム買ってくれる!?」

 そう言って期待の目を向ける息子ですが、世の中そう甘くはありません。

「それはダメよ。約束は約束でしょ。

 次90点以上取れたら考えてあげるから、次回も頑張りなさい」

「ちぇっ、がんばったの意味ないじゃん。やって損した……」

 その後、どうなったか?

 成績は以前と変わらず低迷し、おまけにマンガやゲームで釣ろうとしても、最初の頃ほどの点数は取ってこなくなってしまいました。

 息子曰く、「やってもうまくいく保証がないから、割に合わない」だそうで……。

 自分の将来のための勉強なのに、目先の損得でしか勉強の価値を図れない息子に呆れ返るも、

 そもそも最初に物で釣ろうとしたのは自分かと、大きなため息をつく毎日です。

これは、同じ頃の別のお宅でのお話

 いくら言ってもちっとも勉強しない息子に、お母さんは見かねてこんなことを言いました。

「今度のテストで80点以上取れたら、この前欲しがってたマンガを買ってあげる」

「マジで!?」

 今月のお小遣いを使い果たし途方に暮れていた息子は、目の色を変えて勉強し出しました。

 そして、結果はまさかの80点!

「さぁ、早く早く! お金ちょうだい」

 勝ち誇ったようにマンガのお金を要求する息子を、私は褒めまくります。

「すごい! 本当に今回はがんばってたものね。

 やっぱりやればできるのよ」

「……まぁね」

「先生や友だちも驚いてたでしょう?」

「うん、先生にもすごい褒められたし、友だちなんかめちゃめちゃ悔しがってた!

 次は絶対負けないとか言ってたけど、あいつは頭悪いから、きっと次も僕の勝ちだと思うね」

「そうね。じゃあ、これ、約束のご褒美。よくがんばったわね」

 そう言って約束していたマンガの代金を渡します。

 これで少しは勉強してくれるようになれば一安心です。

 しかし……。

 そううまくはいかないようで、普段よりはいくらかマシとはいえ、息子は前回とは比べようもない悪い点数を取ってきました。

 まぁ、前回はマンガがかかっていたし……。

 それでも、今回のテストは普段と比べればちょっとだけ多く勉強していたような気がします。

 そこはちゃんと評価してあげないと、結果が全てみたいな考えになっても困ります。

「前回よりはだいぶ下がっちゃったけど、今までの点数よりはだいぶいいんじゃない?」

 てっきり怒られると覚悟していた息子は、そんな私の言葉に驚いた様子。

「えっ? そ、そうかなぁ……でも、今回はマンガかかってなかったし……。

 あっ、でも、友だちには勝ってたから!」

「へぇ、すごいわね。そういえば、今回もいつもよりはがんばってたものね」

「まぁ、ちょっとだけね。でも、やっぱりゲームの誘惑には勝てないというか……」

 そんなことを言う息子に、私は新たな賭けを提案することにしました。

「じゃあ、次のテストで頑張ったら、またマンガ買ってあげる」

「ほんとう? あっ、でも、う〜ん、いま別に欲しいマンガとかないし……。

 だったら、ゲーム買ってよ、ゲーム!」

「ゲームって、マンガよりずっと高いでしょ?」

「……だめ?」

「う〜ん、いいわよ。その代わり、今度の目標は90点以上ね」

「きゅ、90点……」

「自信ない?」

「いや、がんばる! 絶対ゲーム買ってもらうから!」

 こうして新たな賭けが始まったわけですが……。

 今回の結果は85点。

 目標の90点にはわずかに届きませんでした。

「ダメだった……」

「あぁ、85点かぁ。惜しかったわね。

 でも、たった5点足りなかっただけだし、お母さんはすごいと思うわよ」

「まぁね、正直ちょっと自信あったんだけど……」

「あぁ、ケアレスミスしちゃったのね。

 今度からしっかり確かめするようにすれば、次はきっと90点以上取れるわよ」

「むぅ……でも、ゲーム買ってもらえなきゃ意味ないし」

「まぁ、確かにゲームにはちょっと届かなかったけど、お母さんは十分がんばったと思うわよ。

 みんなもそう言ってなかった?」

「そりゃぁ、先生も友だちも褒めてはくれたけど……」

「そうよね。それに、これだけ良い点数が取れてるなら、最近は学校の授業もちょっとおもしろいんじゃない?」

「まぁね。先生に指されても前ほどビクビクしないし、話もちょっとわかるようになったかな」

「へぇ、良かったじゃない!

 じゃあ、そんな息子にご褒美をあげましょう」

「マジ!? ゲーム!?」

「それはダメよ。約束は約束。

 でも、今回もすごくがんばったから、今度欲しいマンガがあったら言いなさい。

 お母さんが買ってあげるから」

「ヤッタァ! 次はがんばるよ」

 もちろん、その後息子は急に勉強に目覚めて……なんてことはありません。

 それでも、やればできるという自信は持ったようで、以前よりはよく勉強するようになったと思います。

 最近では、やる気が出ない時には、息子の方から私に賭けを提案してくることもありますが……。

 どうも、賞品目当てというよりは、自分の中でやる気を出させるための一種の起爆剤として考えているように感じます。

 きっかけはどうあれ、がんばった結果が正当に評価されたという体験は、彼の中で一つの自信にはなってくれたようでした。

 ……

 ……

 物で釣って勉強させる。

 やっていることは同じなんですけどねぇ。

 この2つのケース、何が違うのでしょう?

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この記事を書いた人

オンライン家庭教師(指導歴30年以上)

小説家(アマチュア以上プロ未満)
自著:転生幼女は教育したい(ツギクル)

旅人(通算海外放浪歴は1年以上になります)

なんちゃって茶人
(裏千家で一応お茶名を拝受しております)

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