それは、2年生になって初の定期テストに向けて、苦手の数学に取り組んでいる時のこと。
中2の文字式でつまずいてしまった太郎くんは思いました。
「1年前の自分に説教してやりたい!」
あまりの問題の難しさに一瞬目眩を覚えた太郎くん。
気がつけば、目の前にはもう一人の自分が!?
いや、よく見れば、それは1年前の自分ではありませんか!
ゲームに夢中で未来の自分が現れたことに全く気づいていない呑気な自分に怒りを感じます。
「なに遊んでんだよ! 今しっかり勉強しとかないと、1年後には大変なことになるぞ」
太郎くんは、望んだ通り1年前の自分に説教することができました。
でも、そんな太郎くんの言葉に困った様子の過去の太郎くん。
「いや、でもさぁ、ちょうどゲームの期間限定イベントで……」
そうでした。
昨年の今頃は、今もやり込み中のゲームのイベントをやっていて、お気に入りのキャラクターをゲットするのに必死になっている頃でした。
(あのキャラがゲットできなくなる未来は困る……)
つい過去の自分に共感してしまう太郎くん。
そんな太郎くんに過去の自分は言います。
「勉強しなければ将来困るなんて、僕だってわかってるよ。
でも、それはキミ(未来の太郎くん)だって同じでしょ?」
そう言われてはぐうの音も出ません。
二人の太郎くんは同時に深いため息をつきます。
「……思うんだけど、これはもっと小さい頃に戻らないとダメだと思う」
「どういうこと?」
「だから、もっと小さな、小学校に入ったばかりくらいの最初の頃だよ。
その頃だったら、まだスマホも持ってないし、勉強を苦手だとも思っていない。
あの頃の自分にもっとしっかり勉強するように言い聞かせれば、いまの僕たちみたいにはならないんじゃないかなぁ」
「なるほど!」
それは名案とよろこんだ太郎くんでしたが、ふと気づきます。
「それって、今の僕たちとは全く違う別人になっちゃうんじゃないか?
ゲームなんて全然知らないし興味もない、今の僕たちとは全く違うタロウ。
なら、今の僕たちはどこに行っちゃうんだ?」
「「…………」」
こうして過去を変えることの恐ろしさに気づいた太郎くんは、過去の自分を変えることで今の数学の問題を解決する事を諦めました。
そして、あることに気がついたのです。
もし今の自分がしたように、1年後の自分が目の前に現れたとしたら?
きっと、また今日と同じようなことが起きます。
それは、つまり、どこまで行っても現状を変えられるのは今の自分だけということ……。
「さて、現実逃避はこの辺にして、次の問題を解くか」
太郎くんは1年生の教科書と見比べながら、2年生の目の前の問題に取り組むのでした。
……
数学や英語のような積み重ね科目では、今のところがわからない原因が過去にあることはよくあります。
「あの時、もっと勉強しておけば……」
そんなふうに思ったことってありませんか?
でも、過去は変えられない。
いつだって、現状を変えようと思ったら、今から頑張るしかないようです。

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